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■ ■■ ■ HIRUMAS HEADLINE WEEKLY
■■■■■■ 週刊ひるますヘッドライン
■ ■■ ■               第17号 99.10.22-99.10.29
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 ひるますヘッドラインは、ひるますHP冒頭のコラムを一週間分まとめたもの
 です。HP更新情報、マンガ製作日誌、人文系書籍の情報、身辺雑記などです。
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■今週の主な内容
秋田県「願人踊」のビデオ/前田日明vs吉本隆明/『正義論/自由論』/山岸
涼子、最高!/マックOS9/お待ちかね「伊丹堂BBS」開設!/『日本人の
ための経済原論』と官僚論、スティーブン・セガール再び

■99.10.23
秋田県の民俗芸能、「願人踊」(がんにんおどり)のビデオを見ました。この夏
いっしょに岩手に行った方がいろいろとウラに手をまわして借りだしたのを貸し
ていただいたのです。この「願人踊」は、その岩手の郷土芸能祭に参加していて
メチャクチャ面白いというので話題になっていたのだけど、私は残念ながら見逃
してしまったのだった。で、今回見て(実際見たのは今月のはじめですが)、そ
の異常なまでのオモシロサに圧倒されてしまいました。

「願人踊」は、若い男たちが女物の長襦袢を着て、手を上から下へ大きく回転さ
せ、足は内股にクネクネとステップを踏むという踊りで、その動きがなんという
か「今まで見たこともないような」異常な動きで、しかもそこにからむリズムや
歌が滑稽でなんとも可笑しい。というか、はっきり言ってハラがねじきれるくら
い笑えるでのす。これを実際に見てたら、私の「郷土芸能」についての文章はか
なり違ったものになっていたでしょう…。つまり「鹿踊り」というのは、すごい
「深い」ので、それを中心に語るとああいうふうに、真面目なタッチになってし
まう。でも「願人踊」はほとんどギャグ、おちゃらけの世界です。民俗芸能には
こーゆう面もあるわけですねー。
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/WEBZIN/hirumas31.html#0903

といっても、ともかく一目みてもらわないと何がなんだか分かんないでしょう。
このビデオをネットで掲載できればいいのですが…。まぁいろいろ画策してみま
す。とりあえずはオフィシャルな情報が「秋田地区地域情報化推進協議会」の「
八郎潟町」のページに掲載されてますので、ぜひご覧下さい。
http://www.akita018.gr.jp/hachirogata/

■99.10.24
角川の「MW(メンズウォーカー)」の書評コーナー見てたら、リングスの前田
日明さんが、なんと吉本隆明氏の『私の戦争論』(ヘッドライン12号で紹介)
の書評を書いてるじゃありませんか!、前田さんと吉本…、この意外な取り合わ
せもさることながら、内容が強烈。ようするに団塊世代の社会への否定感情の元
凶として吉本氏を強烈に批判してます。いわく無責任な思想家、という感じで。
言われてることは私もほとんど同感(細かい点で最近は「吉本再評価」に傾いた
記述をしてますけど、あくまでそれは「過去の業績」、しかも「哲学的な」ナカ
ミに関することですからね)。評者紹介に前田さんの略歴が載っていてわかった
けど、前田さんって59年生まれで、やはり同世代なんですよね。
参考)ヘッドライン12号
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/HEAD/head12.html

■99.10.25
またまた図書館の本ですが、土屋恵一郎さんの『正義論/自由論―無縁社会日本
の正義』(岩波書店、21世紀問題群ブックス)、これが実に気があう。という
わけで予定外なんですが、ウェブマガジンの32号にこれについて書きましたの
で、ご覧下さい。しつこくも例の「超越的な観点」のハナシがからんでます。と
いうか、このところそれをめぐって書いてきたことの結論的なハナシにもなって
ます。
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/WEBZIN/hirumas32.html

それにしてもこの「21世紀問題群ブックスってシリーズ」は、かなり前からや
ってるけど、面白いのが多い。以前紹介した『こころの情報学』の西垣通さんも
『聖なるヴァーチャルリアリティ』というのが入ってます。これについてはまた
後日。

■99.10.26
またまた人に借りた本ですが、山岸涼子、最高! 私が借りたのは『天人唐草』
『わたしの人形は良い人形』(いずれも文春文庫ビジュアル版)『神かくし』(
秋田文庫)の三冊。いずれも短編集で、それぞれに違う趣向の作品でありながら
それぞれ完成され切っていてスゴイもんです。

この三冊をあえて傾向で分類すると、『天人唐草』は「心理主義小説」な色合い
のつよいもの。『わたしの人形は良い人形』は割と正統的なホラー。『神かくし
』は短編というより密度の濃い中編って感じの2本を中心にまとめられている。
その2本とは「神かくし」と「負の暗示」で、「神かくし」の方は正統的な時代
サスペンス?ですが、「負の暗示」は、なんとあの「八つ墓村」のモデルになっ
た「津山三十人殺し」のドキュメント的作品です。

「負の暗示」は、この殺人犯が犯行に至る過程を誕生時から丹念に描くわけです
が、犯行の原因をなにか一つの動機にもとめるのではなく、山岸先生のいう「負
のサイクル」=悪循環の積み重ねとして見つめていく。この冷徹さがスゴイ。自
分でこの現状をなんとか変えなければならない場面で常に「現実から目をそらす
」ことでその場しのぎでやりすごし、その集積としてとりかえしのつかないとこ
ろへ自分を追い込んでいく…という主人公の姿は、オレなんかも、とても他人事
とは思えないが、それほどまでに著者の目は鋭く、そして「それはしかし誰にで
もありうること」と語りうる深い「やさしさ」に裏打ちされたものでもある。普
通は単純に感情移入して描いちゃうか、つまらない「特定の原因」探しに終始す
るというところでしょう(ちなみに、この「成績がいいのに家庭の事情で進学で
きない」という境遇と、ほとんど「自殺」として犯行をするというところは、例
の池袋通り魔事件にそっくり)。『天人唐草』に入ってる表題作は、これの女性
版という感じで、一人の女性の精神が崩壊していく課程を、同様な手法(分析的
視点からの記述)で描いてます。

ほかに『神かくし』には「黄泉津比良坂」という掌編が入ってますが、これが死
後の世界、とくに「地縛」化した状態を描いていて、なっとく!って感じ。くっ
きりとした意識を持ち得ず、他者の思念とまじりあいつつ、しかし、あいまいに
「じぶん」という自覚はもちつづけているという「霊」の状態を、霊自身の意識
の流れ?の方から描いてるのです。『わたしの人形は良い人形』に収められたホ
ラー系の作品もとうぜん、超常的な現象の実在を前提にしてますが、『天人唐草
』に収められている作品群は、一歩引いてそれを「心理主義小説」的に取り扱っ
てます。これは、京極堂の『百鬼夜行―陰』の原型のようにも読める。主人公の
意識・幻覚として「怪異」が描かれ、それと平行して「客観的」というか、他人
にとっての現実が、暗示されて描かれるというパターンですねー(そーいえば以
前「ダ・ヴィンチ」の「怪談の怪」かなんかで、山岸先生をお招きしてお話をう
かがうって企画もあった)。ともかく、超常的なものの実在に立とうと否定的な
立場に立とうと、山岸先生の描く世界は、人の意識のありようを描ききってるっ
て感じで、どの作品も面白いのです。分析的な視点、意識の流れ的な視点、それ
に加えてホラーとしての面白さの視点、いずれにおいても完成されてる。これぞ
「力量」というものだと驚嘆してしまいます。ぜひご覧下さい。

追記:「ダ・ヴィンチ」の「怪談の怪」、山岸先生登場は9月号でした。

■99.10.27
マックOS9って、どー見てもたいして変わってないんじゃないかと思ってたら
「内部」が変わってるのね。例の「カーボン」が実装されているのだと。我々に
はなんの関係もなく、アプリケーション開発者が、「カーボン対応」にしとけば
同じソフトでOS9でもOSXでも動くってことでしょう。ひいてはワシらが「
カーボン対応ソフト」を持っていれば、OS9でもOSXでも動かせるってこと
になるから、意味なくはないけど、いま現在意味がないのはたしか。雑誌のベン
チマークテストでは、G3以前のマックでちょっと早くなるようではある…。ぜ
んぜん関係ないけど、今日、スクーターの足場にiBookの箱をのせ(なんに
も固定せず)、走り去っていく男を見た。おいおい危ねーぞ!(てゆーか、くや
しーぞ!)

■99.10.28
まだ仮の開設なんですが、「伊丹堂」をホントの掲示板(BBS)化しました。
アドレスは、
http://www65.tcup.com/6510/hirumas.htmlです。
トップページのアイコンからもリンクしてます。
これにともなって旧バージョン(バーチャル伊丹堂)は、
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/GNC/index.html
に格納します。
ぜひ投稿をお願いします(常識的なルールは守ってね)。

■99.10.29
小室直樹さんの『日本人のための経済原論』も図書館で借りたのですが、これ超
ムズカシい。というか、これって「世界ではじめて」経済学というものを、身に
しみて分からせようというとして書かれた本じゃないかと、オレは思うのだけど
オレだけじゃなくて、小室氏(小室師…宮台風にいうと(笑))によれば、東大
出の官僚すら経済を身にしみては分かっていないわけだから、それを分からせよ
うとする本がムズカシイのは当たり前だ。よーするにカントや中島義道さんがい
うように、人に「哲学することを教えるのは不可能」というくらいしんどいこと
なわけだけど、それを「経済学」において「人に経済学すること」を教えんとし
たのがこの本だともいえる。

それにしてもこの本はそういう「経済学すること」の理解の部分ははしょって読
んでも面白く(役立つように)読める仕組みになってる。それは小室氏流の「官
僚批判」が展開されてるからだ。小室氏は「依法官僚制」と「家産官僚制」の違
いというキーワードで、現在の官僚を批判しているが、これは「家産官僚制」は
法によらず(私的)人間関係によって統治を実行していくものであり、これまで
のオレ的定義なら、「世間的」官僚制(世間的権力の代執行)とでもなるでしょ
う。これに対して「依法官僚制」はそのような世間的人間関係による便宜供与を
排して、専ら「法」による合理的な統治を行うものであり、オレ的には「脱―世
間的」であり、「公共の精神」にもとづく官僚制ということになるでしょう。た
だしそれを「依法〜」という名で呼んでしまうと「法に依拠してさえいればいい
」「法にのっとってはいるが、自分からは何もしない」という意味でのズボラも
含んでしまうので、ちょっと言い方を変えるべきでは?とも思った(ちなみに民
主党議員、上田清司さんの本に『法律はお役人のメシの種』というのがあるが、
まさに「依法」官僚のダメさを象徴するタイトルですねー)。折しも、またぞろ
そういう意味でのダメな事件が増えてきているように思う。小室氏は、現在のダ
メな官僚制をただすには、ようするに官僚を監視する第二の権力が必要だとして
いる。オンブズマン制度のもっと強力なもの、というイメージでしょうか…そー
いうことなら大賛成である。

ちなみにワシの「二重権力」のイメージは、アメリカ映画の中にある。たとえば
前に紹介した「世界一かっこいい男、スティーブン・セガール」の『沈黙の断崖
』って映画(ヘッドライン第3号参照)。セガールは環境保護局の役人で、核廃
棄物を不法投棄している疑いのあるある町に潜入して調査するのだが、それを察
した地元警察が(当然その廃棄している企業とはグル)、調査を妨害すべくセガ
ールになんくせをつけて逮捕しようとするのだ。そのときにセガールが逆襲に出
て「ふざけるんじゃねえ!オレにはお前たちを逮捕する権利だってあるんだぞ!
」と言い放つのだ。権力を監視する権力とは、まさにコレでしょう。あとよくあ
るのが、事件に巻き込まれたときに、「警察じゃなくてFBIに電話して!」っ
てやつ。地元警察が汚職まみれで信用できないって設定のときによく出てくるで
しょ。神奈川県の人は身にしみてるだろーけど(笑)、それじゃー神奈川県警じ
ゃなくてどこに電話したらいいっつーの?…まあよーするに水戸黄門でもいいわ
けだけど、水戸黄門の場合、黄門様が来るという偶然を待ってなきゃならないっ
ていうのが、システムとしては不備だってことだね。

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■お知らせ
『オムレット〜心のカガクを探検する』(心の科学研究会G.N.C./ひるます著)
は「心とは何か?」をテーマにした「思考する」マンガです。オムレットの詳し
い内容はこちらに掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/COMIC/digicomi15.html

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