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■ ■■ ■ HIRUMAS HEADLINE WEEKLY
■■■■■■ 週刊ひるますヘッドライン
■ ■■ ■               第28号 00.2.1-00.2.4
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 ひるますヘッドラインは、ひるますHP冒頭のコラムを一週間分まとめたもの
 です。人文系書籍の情報、社会時評、HP更新情報、身辺雑記などです。
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■今週の主な内容
『ブック・オムレット』/TINAMIX/新渡戸稲造の「武士道」/どんと/
えみし学会、門屋光昭氏と北上市民憲章

■00.2.1
去年、サンプル版として描いていた『ブック・オムレット〜オムレツ的読書生活
』をコミック&イラストのコーナーに掲載しました。4ページの短編「書評マン
ガ」です。サンプル版としてとりあげた本はジョン・L・キャスティ著『ケンブ
リッジ・クインテット』という小説で、ヴィトゲンシュタインやらチューリング
といった実在の学者たちが登場して「人工知能はこころを持つことができるか?
」というテーマを語り合うというもの。これにおなじみ伊丹堂とオムレットが絡
んで本の内容を紹介するってものです。ぜひご覧下さい。ただしデータがかなり
重いです。一応ウチの環境から見られるコトは確認してますが…。またこれは『
オムレット』世界を引き継ぐものという意味あいから「伊丹堂書店」からもアク
セスできるようにしてます。
○コミック&イラスト
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/COMIC/digicomi.html
○伊丹堂書店
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/GNC/index.html

追記:ちなみにこのマンガ、何をいまさらって感じで掲載したのは、たまたまウ
チのHPのリンクをチェックしていて、以前からリンクしていた「スタヂオ世界
機械」というHPを久々に見て、人工知能関係の面白い文章があり「そういえば
…」と、思い出したからなのでした。自分の描いたものをすっかり忘れてちゃし
ょーがないが、そーいうことなのだからしょうがない。「書評マンガ」というア
イデアは、まだこれからもやりたいと思っているのだが、いまや架空対談シリー
ズで安直にやってしまえるので苦労してマンガにする気力がでない(その時間も
ない…)のでした。もっとも注文(リクエスト)があれば、やりますのでご意見
およせください。

さらにちなみに、この「スタヂオ世界機械」は、ハイブリッドな文化論から、創
作の数々まで充実する永川成基さんの個人サイト。件の「人工知能とギャルゲー
」の文章は、「スタヂオ世界機械」そのものではなくて、「TINAMIX(ち
なみっくす)」!というオンラインマガジンに掲載されてます。この「TINA
MIX」、いわゆるオタク系の批評を中心にしたもの。「郵便的…」でおなじみ
東浩紀さんも参加しているので、興味のある方は、ご覧ください(2月16日に
リニューアル創刊ということなので、要チェック!)。

○スタヂオ世界機械
http://www2.gol.com/users/nagakawa/
○TINAMIX(ちなみっくす)
http://www.tamon.co.jp/TINAMI/x/

■00.2.2
この前の日曜(30日)、『知ってるつもり』(日テレ)で、エジソンと新渡戸
稲造という奇妙な?取り合わせをやっていたので、見たのだ。新渡戸稲造=5千
円札、それ以外にあまり知られることがない新渡戸さんだが、我が岩手県では、
岩手出身ということで、岩手の偉人ということになっている。といっても、それ
だけのことで、あまり何をしたかを知る人は、岩手県でも多くはないだろう(勝
手な推測ですが…)。ワシが新卒のころ、ちょうど新5千円札が発行されたので
近所のバアさんに「就職試験にそなえて新渡戸さんのことを勉強しとげよー」と
言われたものだった(が、もちろん岩手で就職する気もなかったので、全然ベン
キョーしませんでした)。

そんなわけでこの番組で、はじめて新渡戸さんのことを知ったのでした。新渡戸
さんというのは、日本より海外で有名で、それは彼の『武士道』という著作によ
るのだという。それを愛読してたのがエジソンで…、という話でこの番組はつづ
られていくんだけど、ワタシ的に面白かったのは、この『武士道』なる本、モロ
「公共性の精神」(伊丹堂参照)だってことね。
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/GNC/gnc2.html#00011

新渡戸さんがこの本を書いたのは、ある外人に、君ら日本人にはキリスト教がな
いのに、なぜ倫理があるのか?と聞かれたのが、きっかけになったのだという。
これはほとんど、神(超越的な他者)なしに何故倫理的であり得るか、つまり件
の大澤真幸さん的に言えば「第三者の審級が不在」なのに何故倫理が成り立つの
か、ということにほかならない。なるほど、この時代には、そういう問いがなさ
れうる程度には、日本人は「倫理的」であったのだねー、と妙な感慨を感じると
同時に、やはりこの問いそのものは、神なき時代の倫理を問うって意味で、まっ
たく現代的だよね。

そこで新渡戸さんがたどりついたのが「武士道」だということになる。この武士
道なるものが「公共性の精神」じゃないかというのは、新渡戸さんのあげている
のが、ようするに個人を捨てて、他人、とくに全体としての社会に、つくすとい
う生き方だからだ。一般には武士道といえば、人を斬るのが侍であり、いざ鎌倉
のときは命を投げ捨てて、ということであり、忠臣蔵のように世間からなんと言
われようとがまんにがまんを重ねて、最後には主君やお家のための大義を果たす
ってもんでしょう。なんか偏狭な封建的な倫理が武士道であって、あまり「公共
」というところにはいかないでしょう。結局、新渡戸さんのいう「武士道」は、
すでにその武士が依って立っていた「封建制度」が崩壊した時点で、その「精神
」のみを理想的に抽出したもんだと言えるんでしょう。

それゆえその倫理は、偏狭な封建制はもちろん、「近代」国家の正義をも越えて
「普遍的」な正義へと至る。それが新渡戸さんが国連(国際連盟)の仕事へ力を
入れることのヨリドコロになっているわけでしょう。それはともかくとして、そ
こで理念化された「武士道」なるものが、「主君」(天皇を含む)や「神」とい
う「超越者」によって成り立っているのではないってことがカンジンなところで
しょう(それゆえに「普遍性」に至っているわけだけど)。新渡戸さんは「人を
相手にせず、天を相手にする」ということを言ってて、ここでの「天」が「超越
的な他者」と言えば言えるけど、これはなんらメイカクなカタチを持った価値を
代表するような「他者」ではない。倫理的な高さへと向かって越え出ていこうと
する「方向性」そのもの、ようするに「精神」でしょう。

ちなみに「人を相手にせず」というと何か冷たい感じもするが、そうではなくて
ここでいう人は「世間」でしょう。つまり地縁・血縁を基本とする人間関係によ
って行動の基準を変えていくのではなくて、自分が関わるコトガラそのもの(ウ
ェーバー?)に献身するという態度のことでしょう。天とはコトガラそのものに
内在する理性のごときものか。ようするに「脱世間化」と「倫理」ということを
「武士道」的に表現したのがこれだということか。

いずれにせよ、人を倫理的にするのは「超越的な他者」ではなくて、人がそのよ
うに(精神として)あろうとする態勢だ、というのが、ワタシのくどい話なんだ
が、ここでの武士道に引きつけて言えば、例えば「天が観てるから、こうしなさ
い」ということではなくて、むしろあるコトガラへのかかわりにおいて、「天」
というものは「後から見えてくる」、そういうあり方だ、ということなのだ。そ
ういう意味で新渡戸さんが、それを日本人の宗教、例えば天「教」?として抽出
するのではなくて、武士「道」として抽出したのは、まさに正しい。つまり「天
」を「超越的な他者」として立てるならそれは「教」(宗教)だが、そうではな
くて「道」だというわけだ。ここで「道」とは生き方のことであり、生き方のフ
ォーム(様式)から入って、しかるのちに態勢(生き方のモード)として身に付
けられるもののことだからだ。

「道」と言えば思い出す、爆笑問題の太田光が、北海道で放った名文句があるの
で、紹介しよう。

 …剣道、柔道、北海道…、そうか、北海道は「場所」じゃない!
 北海道は「生き方」だったんだ!
                (『号外!爆笑大問題』コラムのコーナー)
 
あとは蛇足だけど、新渡戸さんが「武士道」として語った日本人の倫理も、その
後の歴史によって裏切られていく(中国侵攻、国際連盟脱退)わけだけど、これ
は「武士道」がすたれたっていうより、やっぱり新渡戸さんのいう「武士道」っ
てのが、理想化されたものでしかないってことでしょう。もちろんそれが悪いっ
てことじゃなくて、それはそれで意味があると思うけど。オレ的に思うのは、よ
うするに「普遍性」へと至ろうとする精神そのものは、常にどんな時代だろうと
なんらかの方向性として存在していて、それがどういうカタチで現れるかってこ
となんだろうと思うけどね。それを「武士道」として見いだしたのが、新渡戸さ
んの時代的限界っていうか。でも新渡戸さん、北海道いたんだから、もうちょっ
とアイヌのことを考えてみてもよかったんじゃないかと思うね(しっかり北大の
キャンパスに銅像がおいてあったけど)。そうすりゃ、その「精神」を武士道で
はなくて、より「根源」へと深めて「ネイティブ・モンゴロイドの文化」(「ネ
イティブ・マインド」について参照)として見いだせたかもしれないわけです(
単なる妄想ですが)。
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/WEBZIN/hirumas33.html#0124

■00.2.3
元ボ・ガンボスの「どんと」さんが亡くなった。ご冥福をお祈りいたします。さ
いきん、アーティストが亡くなると「きっと天使として僕らにインスピレーショ
ンを与え続けてくれるだろう」というのが口癖になってますが(それにしてもあ
まりに若くしてってのが多すぎないか?…)、どんとさんは、ホント、生きてい
る頃から天使みたいな人でした。
↓オフィシャルな告知はこちら
http://www5a.biglobe.ne.jp/~diddley/rockon.htm

アイタル通信に「ナナオ・サカキ・リーディング」(詩の朗読会)のお知らせを
掲載しました。2/19開催です。ナナオさんは、いわゆる「ビートニック」と
のつながりの深い、放浪する詩人、大正生まれです。下村誠さんの名曲『虹の箱
舟』に出てくる「地球B」は、ナナオさんの詩から来てます。そういえば、下村
さんの『SACRED SOUL』には、どんとさんがゲスト参加していたので
した。
○アイタル通信
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/ITAL/index.html
○下村誠『SACRED SOUL』
http://page.freett.com/nattyrec/index.html

■00.2.4
節分というと鬼だ。鬼というと「世界鬼学会」だが、入会申込書を請求しておき
ながら、まだ手続きしてません。と、思ってたら、前から問い合わせていた「え
みし学会」の入会申込書が来てしまいました…(しまいましたってことはないか
自分で問い合わせといて。…いや、いつものことながら、金欠なので)。
○世界鬼学会
http://www.ceres.dti.ne.jp/~id-ooe/oninet.htm
○えみし学会
http://www.jomon.com/anbe/emisi/emisi.html

えみし学会の方は前回、去年の秋に行われた大会(第10回「えみし文化ゼミナ
ール」)の資料集なども送っていただいたのだけど(なんか唐突にも大量に送ら
れてきて、これじゃ、入会するしかないなー、いや、もちろん入ります、入らせ
ていただきます(笑))、これ、ナカミがすごい濃い。しかも偶然にも?、ここ
にも「鬼」が出てくるじゃーないですか。門屋光昭さんの「北の鬼の復権」って
論文が載ってるんです。大会では門屋さんが基調講演として「えみしと鬼」とい
うテーマで話されたようなので、そのレジメなのだろう(書き下ろしかどーかは
不明)。

門屋さんは知る人は知る、わが(故郷)北上市の「鬼の館」館長にして、盛岡大
学の教授。「鬼の館」って何だ?っていうと、ようするに「鬼」に関するもの(
仮面の類が多い)を世界中から集めた博物館ね。なんでそんなものが北上にある
のか?というと、前に郷土芸能についてに書いたように、わが北上市には「鬼剣
舞」という芸能があるからね。さらには大河ドラマの「炎立つ」の影響もあって
中央政府からは「鬼=えみし」とさげすまれながらも、それに対して戦ったとい
う、文化的−民族的な誇りを「鬼」に託す、という機運が強まったってことがあ
るんだろうね。で、門屋論文は、そのあたりの東北の歴史(民族的抵抗史)と、
東北の鬼の伝説のバリエーションの関係を、うまくコンパクトに整理してくれて
るのだ。後半では件の「鬼剣舞」の歴史と(発生に関する)伝説をまとめている
し、これは手元に置いて常に参照したい一冊になりそうだ。
○郷土芸能について
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/WEBZIN/hirumas31.html#0903

ちなみに門屋さんはこの論文によると下関生まれで島根方面の山陰育ちというこ
となので、鬼/妖怪/民俗には縁もゆかりも深〜い人ということになる(なんの
こっちゃ?と思われるかもしれないが、山陰というのはそういう場所なのだ。よ
うするに出雲大社は、東北が鬼とされる以前の鬼、元祖の鬼であり、水木しげる
の発祥の地が山陰である、とそういうこと)。その門屋さんが鬼の研究を始める
きっかけになったのが、北上市の「市民憲章」を読んで驚いたからだという(以
下、「えみし学会」会長の序文による)。そんな憲章があるとはオレも最近まで
知らなかったが、それを引用しておこう。
 あの高峯 鬼すむ誇り
 その瀬音 久遠の讃歌
 この大地 燃え立ついのち
 ここは北上
う〜ん、なかなかネイティブ・スピリット溢れる?いい詩ではないですか! こ
の「鬼すむ誇り」というのに、「なんで鬼が誇りなの?」とはじめは驚いた門屋
さんが、東北の鬼研究をして、鬼が中央政府に討伐された遠い祖先たちの霊であ
り、それを敬い誇りとすることは、「討伐されたエミシの復権を願う熱い心意気
を示すものである」という結論に達したのだという。オレ的に言えば、「エミシ
の文化」を引き継いでいこうとする熱い心意気ってとこか。いずれはオレも、え
みし学会で「エミシの文化とネイティブ・モンゴロイドの文化」などといったテ
ーマで研究発表したいものである。なんか特別料理!を囲んでの懇談会もあるら
しいし、基本的に泊まりがけでやるらしいから、面白そうだ(その前にキチンと
研究しなくちゃってことだけど)。
○蛇足ながら私の「鬼をめぐる随想」はこちら
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/WEBZIN/hirumas19.html#oni

この資料集には、ほかに「シャーマニズム」の考察や、縄文の食生活について、
などが掲載されており、また別冊として田中紀子さんの「岩手の鉄文化」という
本もついてくる。これはもののけ姫以来、タタラが気になってしょうがないって
人?にはおすすめか。

ちなみに、えみし学会や世界鬼学会については、ウチのリンク・ページにチラッ
と解説がのってますから、ご興味のある方はそこからジャンプしてみて下さい。
それにしてもこういうふうに、いろいろな学会が出来て、学者たちの内輪ばなし
ではない、それぞれの関心にのっとったコトガラそのものへの奉仕が行われてい
くのは、基本的に大歓迎、そして会を立ちあげている人々には大感謝だ。
○リンク・ページ
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/link.html

追記:ってわけで、今年は豆まきをしませんでした。鬼はウチって感じですね。

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 ■おしらせ
 『オムレット〜心のカガクを探検する』(心の科学研究会G.N.C./ひるます著)
 の詳しい内容は下記URLに掲載しております。ぜひご覧ください。
 http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/COMIC/digicomi15.html
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 発行者:堀込広明  (C) HIRUMAS 2000
 ご意見・ご感想等:info@hirumas.com
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 配信:Pubzine http://www.pubzine.com/
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