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■今週の主な内容
森退陣「表明」と菅野美穂

■森退陣「表明」と菅野美穂(01.3.13)

獏迦瀬: 森首相が退陣を表明したんだかしないんだか分かりませんが、ともかく辞めるってことが決まったってことですか。伊丹堂さんにはまた「いまさら」だと言われそうですが、こういうハッキリしないやり方は、ちょっと許せないですね!
伊丹堂: まったくじゃな。
獏迦瀬: おっ今日は乗ってくださるんデスか?(笑)。なんたって民主的な手続きが踏みにじられてますよね。森さんについては「密室で生まれ密室で消える」なんて言い方がされてますが…。ようするに何で辞めるか何で辞めないのかという理由が「公」に向かってキチンと説明されてません。言葉というかロジックってものがないがしろにされてるわけで、それは結局は「誰も責任をとらない」ってことじゃないスカ。
伊丹堂: なるほどね。ナカナカいい点をついとるじゃないの。とくに「責任」という点に言及したのは秀逸じゃな。すなわち「政治」とは本質的に「倫理的」なものなのであって、それはウラハラに責任を伴うものなのじゃからの(「政治」の倫理的位相についてはこちらを参照)。
獏迦瀬: 秀逸とはまた不気味ですね…(冷汗)、なんかウラがあるんじゃ…。
伊丹堂: ふふ、まぁ正論は正論じゃが、いろいろと勇み足があるの。まず政治家が公的に思考し行動してないということを言うわけだが、それは内面的・実存的な問題、いわゆる「資質」の問題であって、それこそ「いまさら」じゃな。しかも彼はそういう人物であることが、世の中に公然と知れ渡りながら総選挙で当選してきているわけで、彼の資質を批判するのであれば、当然批判されるべきは、選挙で彼に投じた有権者タチということになる。
獏迦瀬: それはそうですが、そ〜言っちゃうと、政治家ってのは、絶対的に批判の「圏外」にいるってことになっちゃうんじゃ…。
伊丹堂: そんなことはないが、彼のバアイはそうだ、ということになるわな。もちろん彼を「擁護」するわけではないが、ここのところ、選挙区の諸君にはよ〜く身にしみていただきたいところじゃ。で、第2点、「民主的手続き」うんぬんじゃが、これはそもそも「自民党」というのは、「私党」、有志の人々の(というか烏合の衆の、と言いたいとこじゃが)寄り合い所帯なんじゃからして、その中で「民主的な手続き」が踏まれるかどーかなんてことは、ワシらの知ったこっちゃないってことじゃな。
獏迦瀬: でも自由「民主」党ですよ…。
伊丹堂: 一般的に、政党や前衛集団が標榜するイデオロギーと、その集団内を統率する原理とは同じではないし、同じ必要もない。自民党が「民主主義」を実現するための政党であっても、内部が「親分子分」の関係で律せられていて、なんの問題もない。問題もないというか、部外者のワシらには関係ないってことよ。
獏迦瀬: でもそんなことでいいんでしょうか…。この情報化の時代に。
伊丹堂: がはは、だから「いいか悪いか」の問題ではなくて、そ〜なっておる、と言っとるのじゃ。つまりワシらは、たとえば「自民党の内部が民主的に運営されていない」のが「悪い」と思ったからといって、それを批判して改革してやらねばならぬなどという「義理」はないってこと。そ〜思ったなら、自民党に投票しなければいいだけのことなのじゃ。
獏迦瀬: う…たしかにそうです…。というか今日(13日)、自民党大会が行われ、会場に入ることもできない地方の党員や議員なんかが怒ってましたが、いっそこの人たちで別な政党作ったほうがいいんじゃないか、とボクもフト思いましたよ。
伊丹堂: そういうことよ。それはキミが正しい(笑)。それにしても「密室」だのというコトバに惑わされてはいかん。ぜんぜん密室でもなんでもないんじゃからの。だいたいホントに密室だったら、件のムラカミ氏の「森さんでいいんじゃないか」発言だって、なんでワシらが知りうるんじゃ。
獏迦瀬: それは…なんか、K井さんの屁理屈みたいですが…。
伊丹堂: うふふ、たしかに彼はそんなこと言ってたかもな。しかしワシがここで言っときたいのは、密室政治やらなんやらというコトバを使用することによって、実ハ、マスコミは「権力」の維持に一役買ってるってことじゃ。
獏迦瀬: 権力維持ですか…?
伊丹堂: つまり、そこにホントに「密室」みたいなものがあり、政界の黒幕みたいなものがいて、実ハ日本を手のひらの上で操ってるのだ、というようにイメージを撒き散らしているわけじゃな。
獏迦瀬: そんなぁ(笑)、映画じゃあるまいし…それにそういうイメージがあったら、逆に権力に反対しようと思うんじゃないですか?
伊丹堂: それが若さというもんじゃな(笑)。映画みたいな話だから、そんなハズはないというのではなく、むしろ映画ほど単純ではなく、しかし映画のような権力を持った人たちがいるはずだ、と無意識に確信してしまうのが、世間の人々というものじゃ。これこそ、キミ、先日の「LaVue」で話題にした平野真さんが「複製芸術のアクチュアリティー」で語っている「アウラ」ってもんよ。
獏迦瀬: なるほど、密室うんぬんが語られるたびに、権力のアウラみたいなものが強化される…と。
伊丹堂: そこでじゃ、そういうアウラをまとった権力の周辺をうさんくさいと思いつつも、たとえば地元へ流れてくる公共事業やらなんやらの予算は「きっとそういう密室で決められているに違いない」と思いこみ、権力者タチをうさんくさく思いつつも、自らそういう権力を成り立たせるべく行動(投票)してしまう、という、日本の「長いものに巻かれユク日々」が続いていくわけよ。
獏迦瀬: 「アメリカの核の傘」ならぬ「権力のアウラの傘」…ですか。
伊丹堂: あまりゴロがよくないが、そ〜いうこっちゃ。
獏迦瀬: その権力って、でも「幻想」なんでしょうか。アウラはアウラとしても、実際、なんか権力基盤ってのはあるような気もするのですが…。
伊丹堂: それはまさにヴァーチャルにしてリアルってことじゃな。法やお金が虚構の存在でありながら、人々の確信によってリアルになるのと同じじゃ。そしてそこにこそ、彼らが「密室」のなんのと言われたり、「密室」で決まったことと、公式に言ってることが食い違っていてなおかつ、その二枚舌が公然と知れ渡っていながら、平然としていられる理<コトワリ>というもんがある。
獏迦瀬: <コトワリ>ですか…いわゆる「一理ある」というヤツですね。もうちょっとで、彼らは頭がおかしいんじゃないか、と口をすべらせるとこでした。会社や学校にああいう人がいたら、どー考えても「困った人たち」というか、ハッキリ言って人格障害者としか思えないところです。
伊丹堂: 実際もんだい、一般の人たちの感覚からしたら、そういうコトなんじゃないかの。そんなことうっかり言ったら、差別や誹謗中傷になってしまうから、ナカナカ言わないが…。去年の総選挙では、都市部で自民党が壊滅したわけじゃが、その総括として、評論家の森田実さんは「都市部の有権者が(自民党執行部は)ふつうの知的レベルから見ておかしいと感じた」、その結果だとしているが、まったく言い得ておる。
獏迦瀬: 都市部では「アウラ」が効かなかったワケですね…。
伊丹堂: 言うまでもなく崩壊してる(笑)。しかし、アウラが崩壊したっていうと、単に都市部では無軌道でバラバラ、無政府状態、ニヒリズムに走ったみたいに聞こえるかもしれんが、そんなことはない。都市には都市の理があるわけじゃ。
獏迦瀬: 都市のコトワリですか。
伊丹堂: まぁ予算バラ蒔きか、構造改革か、という争点は確かにあったのじゃが、有権者の投票行動にその路線対立がどこまで意識されておったかは疑問じゃな。都市部の有権者が必ずしも構造改革路線を支持しているわけではない。そんなことよりも、都市部の有権者にとってカンジンなことは、路線はどうであれ、自分が「政策決定のプロセス」に参加しているという運動感覚みたいなもの、これじゃろう。
獏迦瀬: 運動感覚…って学生運動とかデモとかですか。
伊丹堂: がはは、違うって。ドライブしたり、スポーツで球を自在にコントロールしたり、またそれを他人に打ち返したり受け取ったり、という「感じ」のことじゃ。運動感覚として関わっていることがダイジなのであって、結果として自分の希望する政策が実現したかどうかが問題ではない。たとえばよく「民意が届かない」などという不満が語られたりするが、それは政治家が有権者の言うことをよく聞く、悪く言えばいいなりなる、ということを願ってるのでは全然ない、ということじゃ。
獏迦瀬: ああ、なるほど…それは分かる気がします。
伊丹堂: というか、キミが最初から政治のことでイライラしておるその根源はまさにこの運動感覚が阻害されてることにあるわけよ。それが何より証拠には、キミはぜんぜん経済政策やらなんやらのことは話題にしない(笑)。
獏迦瀬: たしかに…。
伊丹堂: 権力のアウラの下で、長いものに巻かれつつ生きていくか、そういうアウラが崩壊した場所で、自らの運動感覚に従って生きていくか、この二つのコトワリがまっこうからぶつかっているのが現在ってことじゃな。じゃが、どっちが上手くいくか?たとえば経済政策的に成功するか?ということは、この二つのコトワリのどちらがいいのか?ということとは、あまり関係ないわけじゃ。関係なくはないが、「原理的には」関係ないというかね。政策立案とその実行は、つねに倫理的なコトの創造であるからして、失敗するという可能性をウラハラに持っているわけじゃからね。
獏迦瀬: でも今のところ、「長いものに巻かれユク」路線からは、なんら有効な政策が出て来てないということは、明らかだとは思いますがね…。それはともかく、さっきから気になってるのは、森首相の周辺に「一理ある」としても、彼らは一国の運営を預かる人間として、そういう一方の「理」だけに従っていていいんでしょうか? 一般人からみて「異常」な言動をとっているということに気づかないのはやはり「おかしい」という気がします。話の蒸し返しかもしれませんが…。
伊丹堂: まあ他者への永続的な配慮っていうか?、それが作動してない。ようするに公共的に考えることが出来ない、ムラ社会の政治家なんじゃね。政界総村山化っつーかな。
獏迦瀬: それにしてもなんでこんなことになっちゃったんでしょうか。つまり有権者がそういう人を選んだからというのはそうでしょうが、けっこう有権者は自民党に自動的に入れてるという人が多いと思います。だからファクターとしては、自民党議員の質が急激に低下しているってとこがあると思うんですが。
伊丹堂: 急激でもないと思うが…キミもそうとう自民党のアウラにおかされてるようじゃな(笑)。それはともかく「質が低下して」公共性の精神がすたれてきたというんであれば、いつも言ってるように、それを説明する言葉はひとつしかない。つまり「文化が崩壊した」んであり、「文化が伝承されてない」ってことじゃ。昔のいわゆる大物政治家というものは、それなりに国全体を視野に入れたそれなりの公共的思考というものがあったハズじゃが、その子分達に、そういう文化は伝わってないってことじゃろうな。ワシなんかが「密室」を見て笑っちゃうのは、ようするに彼らがやってるのは「大物政治家ごっこ」にすぎないからじゃ。
獏迦瀬: どーせ「ごっこ」なら、きちんと「演技指導」してほしいですよね。
伊丹堂: うまい! 獏迦瀬くんに座布団一枚やっとくれ(笑)。ま、彼らに演技指導して再教育するって言っても、すべて手遅れじゃがね。そんな彼らが「教育改革」などと、さらに笑わせるわけじゃが…。
獏迦瀬: ところで「演技」と言えば、面白い記事が載ってたんで、先週の赤旗日曜版(3月4日)、持ってきましたよ。
伊丹堂: アカハタ?!、お前さん、やはり共産党員じゃったか?
獏迦瀬: ち、違いますよ〜(笑)。大家さんちにタダで放り込まれてくるのデス。日曜版だけですけどね。で、それに菅野美穂さんのインタビューが載ってて、それが面白いんです。
伊丹堂: 菅野美穂、…演歌歌手じゃったかな。
獏迦瀬: なにとぼけてるんですか…ひるますさんが「バカ話掲示板」でよく話題にしてるじゃないスカ。それと、どっかで珠緒さんのモデルだとか言ってました…。タレント、というか女優ですよ。アイドルでありながら、いわゆる「怪優」でもあるという、変わったポジションにいるヒトですね。昔で言えば栗原小巻と緑魔子を足して2で割ったようなものです。
伊丹堂: お前さん…いったい幾つじゃ?
獏迦瀬: え?…二十歳ですけど。アヤコさんの同級生ですから。
伊丹堂: …ま、それはともかく、その菅野さんがど〜いう話をしとるんじゃ?
獏迦瀬: はい、菅野美穂さん、以前は「役」になりきることばかり考えてたというんですが、「思い入れが強すぎるばかりでは、バランス感覚を失ってしまう。いまは、<役は「役割の役」>としてまっとうすべきものなんじゃないのかな」と思うようになったというのデス!
伊丹堂: 役割の役!…なるほど、それは面白い。つまり、全体の割付の中での役の位置を見極めつつ、その役になりきる、という二重の視点で演技をするというワケじゃな。
獏迦瀬: それで、自分の「役」というものが全体の中での一つのパートにすぎないということに気づいてから、いかに周りの人に助けられてきたかも分かったというのです。それで、最後に「周りの人を気遣っていける大人になれたらいいなぁ」というコトバで締めくくってます。
伊丹堂: ほぉ、それはぜんぶ森首相に聞かせてやりたいコトバじゃな。
獏迦瀬: そうなんですよ、彼は一つの「役」を杓子定規に演じてるだけで、まったく公共性の中での「役割」が見えてません。永田町の中でだけ通用する「役」の外側に越え出ていく「配慮」ってものがまったくないんですよ!
伊丹堂: まぁその通りだわいな。それにしても「役割の役」とは面白い。言ってるコトの内容的にはまぁ普通かもしれんが、そのコトバが新鮮で発見的じゃね。哲学者の素質があるじゃないのか(笑)。
獏迦瀬: ホレ直しました…(赤面)。
伊丹堂: 我々も何か「コト」をなすに当たっては、単にその「コト」に埋没するのではなくて、「コトワリのコト」を見極めなくてはならんってことじゃな。
獏迦瀬: あ、コトワリの「ワリ」って役割の「割」なんですか…?
伊丹堂: なんじゃ、それが分かっててこの話題を出してきたんじゃなかったのかい。つまりコトワリ<理>とは、「事―割」ってことじゃ。文脈でありコンテクストと言ってしまえばそれまでじゃがの。権力のアウラの中だけで通用するコトワリのごとき、局所的コンテクストを超え出て、より大きなコトワリの中で考えること…それがワシらの倫理的課題っつーことになるんじゃろう。

●ひるますの単行本『オムレット〜心のカガクを探検する』
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