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「ちょっと梅雨入りの政治学」号


■CONTENTS
田中外務大臣を雑談する古本屋政談・梅雨の陣

■田中外務大臣を雑談する(01.6.16)

獏迦瀬: そろそろ田中外務大臣についてお話を…と思うのですが。あれだけ世間をにぎわしている話題にふれないのもどうかと思いまして。
伊丹堂: めんどくさいのぉ。…Nステで久米宏が「田中真紀子問題なんて問題じゃない」と言っておったが、ワシも同感じゃよ。機密費やら情報リークなどの「問題」があるだけであって、ことさらに田中真紀子の「大臣の適格性」が問われるなどということはない。
獏迦瀬: ボクも田中外相のことを言うのであれば、前の河野さんが何をしたか・しなかったか、ということをキチンと言うべきだと思いましたね。
伊丹堂: いつも言っておることだが、「政治」とは何か、ということじゃな。少なくとも田中真紀子は、「国民の権力によって社会に介入する」という意味での「政治」を最もよく理解している政治家の一人であることは確かじゃな。
獏迦瀬: 一度、国会中継で演説をぶっているのを聞きましたが、単に現在の国民の意志だけではなく、将来の国民(これから生まれてくる子供たち)の立場をも配慮して、政治が世の中を変えて行くべき、というようなことを語ってました。たしかに「公共性の精神」ということが分かってる人ですね。今までは単なる「主婦感覚」を売りにしてる人と思ってましたので、意外でした。
伊丹堂: そうね、むしろ「モノが分かってる」という意味では稀有な部類に入るということは発見じゃったな。というか、本来は政治家が「政治」を分かってるというのは当たり前のことなわけで、それが稀有になってるというところが、いまの日本の悲劇ではあるんじゃろうがな。
獏迦瀬: ふふ、あまり誉めすぎじゃないですか。小泉内閣にはあくまで批判的なワケでしょ、伊丹堂さんは。
伊丹堂: ま、それは別問題ということにしとこう。そろそろ小泉内閣の実質というのが、露呈してきてるからな、それは逐一検討していけばいいわけじゃ。
獏迦瀬: ところで「田中問題」とも絡むのですが、作家の高村薫さんが朝日新聞のコラムで、小泉内閣の支持率8割に批判をしてました(5月31日)。これはある意味で田中外相批判の典型とも言えるものだと思いますが、いわく「品がよろしくない」というヤツです。
伊丹堂: 品がいいか悪いかと言ったら、悪いに決まってるわけで(笑)、それ自体は誰も反論できない。しかし何の意味もない空疎な議論にすぎないの。
獏迦瀬: 空疎と言ったら、高村さんの小泉内閣支持率八割に対する「危惧」というもの自体、単に「大衆の熱狂に恐怖を覚える」ということでナカミないんじゃないでスカ。高村さんは、大衆に対するご自身の危惧を「バランス感覚」などと称していますが、ハッキリ言って単なるアマノジャクではないでしょうか…。
伊丹堂: 危惧を覚えると言うなら、森内閣が低支持率でなお居座り続けていたという状況の方がよっぽど「異常事態」じゃと思うがね。だいたい危惧を覚えるホドに「熱狂」してるヤツなんてほとんどいないじゃろ。「まぁ今までよりはダイブいいんじゃないの」ってのが、「支持」なるものの実態じゃないの(笑)。そんなのちょっと周りの人間を見渡せばすぐ想像できることで、それこそ健全な社会感覚ってもんじゃないかの。
獏迦瀬: そうっすね。小泉を支持するかど〜かは別として、現在の支持率がそんなに異常なものとも思えませんね。ボクだって支持するかど〜かという単純なアンケートで聞かれたら、「まぁ今までよりは…」って意味で支持にマルするかもしれません。問題はそんな単純な支持するかしないかという問いでは明確にならないとこにあるんですよね。
伊丹堂: ってことが、この高村という作家さんにはまったく分かってないようじゃな。ようするに自分は「知識人」だから、大衆の動向にはちょっと批判的な立場ですよ、ということを表明する以外なんの意味もない文章じゃな、これは。
獏迦瀬: 「なぜ支持するのか、自分なりにチェックを」というのが、このコラムの見出しにもなってる高村さんの提言なのですが、「なぜ支持するか」なんていうそれぞれの人々のそれぞれの理由が、こういう支持率なんかの数字の中にそもそも表現されるワケないじゃないすかね。高村さん自身は、そういう理由なり思想なりを表明できる「場」があるからいいでしょうけど、ほとんどの人(大衆)はそんなの表明する場所なんてないっすよ。
伊丹堂: わはは、まさにその通り、大きなお世話じゃよな。高村氏は「レディジョーカー」で、名もなき庶民の立場でが分かってモノを書いているかのごとき振る舞いをしていたが、とんでもない食わせ物じゃったな。というより、なんでシバリョウ以来、単なる「作家」にすぎない人をこ〜やって「知識人」として持ち上げるようになってしまったのか。高村薫になんの見識があるっていうのかの。
獏迦瀬: 外相問題に話をもどすと、高村氏の言い分は「外務省の改革が必要なら内部でして下さい。外相が外務省の悪口を公にして、どうするんですか」と言うものです。内部で処理しろってどういうことなんでしょうか。国民には知らせずにこっそりやってくれ、と言うんでしょうか。
伊丹堂: 開いた口が塞がらんとはこのことじゃな。まったく政治の意味がわかっとらん。ようするに、この人は「外交」ってのは、上品に海外の高級な人たちと社交ダンスすることだとでも思ってるんじゃなかろうか。そういうのは一般に皇室外交っていうんじゃが…。
獏迦瀬: 外交ってのは、ようするにネゴシエーションの鉄火場勝負ですよね。
伊丹堂: ふふ、キミもわかっちょるね。小泉もそこまで分かってて田中真紀子を外相に据えたとしたら、ナカナカのもんじゃがな…。つまり田中外相が、相当有能なネゴシエーターであることは間違いないからの(笑)。
獏迦瀬: そこまで策士でもないでしょう…。
伊丹堂: それが悲しいとこじゃな。

■古本屋政談・梅雨の陣(01.6.27)

獏迦瀬: 都議選、自民圧勝ですか…そんなもんなんスカね。
伊丹堂: ふふ、気に入らんようじゃが、やはりキミもアマノジャクじゃな。
獏迦瀬: そんな…ボクは単なるアマノジャクではなくって、小泉支持はいいとして、そこで自民党に入れてしまうのは、ちょっと違うんじゃないかと思ったまでです。
伊丹堂: いわゆる自民党自体が小泉的構造改革に対する「抵抗勢力」だって話かいな。それは「国政選挙レベル」ではあるていど妥当性があるが、都議選レベルでは当てはまらんの。
獏迦瀬: まあたしかに地方組織が、中央の旧執行部に反旗を翻して小泉支持に回ったことからコトが始まってるわけですから、地方組織と小泉サンの関係は良好だということになるんでしょうけど…でも、伊丹堂さんの見方では、それはようするに「なにがなんでも政権中枢にしがみつきたい自民党的本能」のなせるワザってことじゃ〜なかったですか。
伊丹堂: しかしさらに東京の場合は特殊事情がある。別に自民党のカタもつわけではないから、安心して聞いてほしいが(笑)、東京の場合、早くから「東京自民党」などと名乗っていたように、単に「本能的に」場当たり的に小泉に乗ったというよりも、すでにして自前で旧自民党的な「守旧」路線からは自立していたという面があるわけじゃ。
獏迦瀬: はあ…政策的にも小泉サンと一致している…といえるわけですか。
伊丹堂: ふふ、小泉に本当に政策があるのかど〜かは問題なんじゃが…。今回の都議選の結果を見て一番よろこんだのは誰か?と言ったら、石原都知事よ。
獏迦瀬: たしかに、にやけまくってましたが…それが何か。
伊丹堂: ようするに「東京自民党」と政策が一致しているのは、むしろ石原都政ってコトよ。これも構造改革路線と一言でいえばそれまでじゃが、ようするに市場原理第一主義ってことじゃな。日の出のゴミ処分場に関する強制収用に象徴されるような、生活に密着した問題はバシバシ切り捨てていくやり方なわけじゃな。
獏迦瀬: そういえば共産党が減ってくれたのが嬉しいとか言ってましたね。
伊丹堂: そ、小泉人気のどさくさに紛れて、東京都民は石原にオールマイティのカードを渡してしまった、というのがコトの真相よ。
獏迦瀬: うげ…それじゃやっぱり自民に投票ってのはマズいじゃないスカ。
伊丹堂: 同じマズイと言うんでも、ちゃんと理路を押さえてないとダメってことよ。そのへんは小泉人気を意識しすぎて、都政をきちんと争点にできなかった野党にも責任がある。こういう言い方はマスコミ的中立主義みたいでキライじゃが、今回についてはそう言うしかないわな。
獏迦瀬: それにしても参院選はこのノリで行っちゃいそうですね…。小泉サンはほんとうに「抵抗勢力」を含めた自民党に勝って欲しいと思ってるんでしょうか。
伊丹堂: 思ってるに決まっとる。彼はともかく「自民党が好き!」なんじゃから、しょうがないじゃろ(笑)。彼にとっては自民党あっての物だねであって、自民党のせいで改革ができないっていうなら、それはそれで、しょうがないと思っとるわけよ。その程度のハラ(覚悟)だからこそ、ず〜っとお題目のように「郵政民営化」なんてコトを言ってこれたわけじゃ。
獏迦瀬: そんなもんですか…。
伊丹堂: そんなもんよ。じゃからこそ、逆に「改革」という名の下で何もかも一緒くたに支持してしまうコトが、危険なんじゃ。トータルな政策のスジミチというものが実はなくて、「抵抗勢力」すら、じつは何に抵抗しているのか分からなくなってしまう、という状況がすぐ先に控えてるわけよ。「構造改革」というもののナカミの検証をどれだけ「争点化」できるか、それが参院選までの勝負ってことになるじゃろうね。
獏迦瀬: いまの野党みたいに「抵抗勢力」批判だけやってたんじゃ、たしかにボロ負けしそうな気配ですよね…。民主党は巨泉さんを引っぱり出しましたが。
伊丹堂: ヘタじゃな、演出が。以前Nステに出演してたのを見た限りでは、巨泉という男はかなりのレベルで政治や民主主義についての理解を持っているようじゃが、あの出馬表明はなんの魅力も感じさせないもんじゃったの。
獏迦瀬: はあ…とりあえずはこれからの論戦に期待しときましょう。

●ひるますの単行本『オムレット〜心のカガクを探検する』
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