prev. | No.65 01.7.28 | next

「時は今、あめの下知る文月かな?」号


■グローバルな空の下で…(01.7.23)

獏迦瀬: ジェノバ・サミットが終わりましたが、…ど〜にも間が抜けてますね。小泉サンはおんなじ言葉ばっかり繰り返してるし、鼻歌なんか唄っちゃったりして。なんの成果があったって言うんでしょうか。
伊丹堂: がはは、成果がどうの、というコト自体が今回は問われたわけじゃが…。
獏迦瀬: と言うと…。
伊丹堂: つまり今回のサミットの「成果」って、例の反対デモに見られるように、「反グローバル運動」ってものが、あれほどまでに大きな潮流として存在しているということが、それこそ世界の人に「認知」されたってとこにあるんじゃないのかね。
獏迦瀬: つまりサミットで成果を出すというコトの是非そのものが問われてるということですか。つまり先進8カ国で世界の枠組みを牛耳ることへの反対ということですよね。そのために死者まで出ましたが…。たしかに今回はマスコミでもかなりその運動の意味あいみたいなものが肯定的に取りあげられていましたね。小泉人気の醒めていく度合いと相まって、かなり公平な取り上げ方だとは感じました。
伊丹堂: それとウラハラにはっきりしてきたのは、ようするに小泉流の構造改革とは、グローバリズムそのものだってこっちゃな。
獏迦瀬: どっかの解説で反グローバル運動が批判しているグローバリズムとは、ようするに「国境無き経済至上主義」だと言ってました。よ〜するに自由「市場」主義ってことですか。
伊丹堂: そ、市場至上主義(笑)。じゃあそれって何だっていえば、ようするに直近の将来における利益の追求にすべてを任せるってことヨ。とにもかくにもすぐに儲かるコトをしよう、と。それによって利益が増大すれば、リストラや倒産でものすご〜く迷惑する人が出ても、全体としては潤うからそれで埋め合わせましょうということじゃな。
獏迦瀬: それを一国経済だけではなくて、全世界レベルに拡張しようというのがグローバリズムだと…。小泉流構造改革とは、そういう意味でのグローバリズムとまったく連動するものというワケですね。
伊丹堂: 結果としてな。基本的に小泉にはそういう考え方そのもの、グローバリズムを一つの信念として成し遂げようという思想はないじゃろ。小沢一郎が小泉に対して、構造改革と言っても何のビジョンもないではないか、というのはまさに的を射た表現よ。
獏迦瀬: 経済至上主義と言わずに郵政民営化と言うのは、ある意味ではズル賢い気もしますが…。
伊丹堂: いや、自分でもよく分かっとらんのじゃろ(笑)。
獏迦瀬: そうですか(笑)、まぁ本人にしか分からないコトですが…。どっちにしても、結果としての経済至上主義にしろなんにしろ、構造改革的なものが必要だというのは国民のコンセンサスみたいなものはあって、そこが小泉支持につながっているんだとも思いますが…。
伊丹堂: まぁいつの世も人は経済的な豊かさを求めてはいるわけじゃから、それをコンセンサスと言ってしまえばそういうことになる。しかし、問題は多くの人がその経済至上主義的構造改革なるものの実体を知らずに雰囲気として「支持」してしまってる、ということじゃな。
獏迦瀬: そこをまだマスコミや論壇もうまく捉えていないんじゃないですか。「文芸春秋」が小泉内閣批判をしてましたが、まだまだ核心をついてないというか、もどかしい感じでしたね。高村薫さんも今回はちょっと冷静に書いてるみたいでしたが(笑)、そのぶん迫力もなにもないです。
伊丹堂: それはようするに、マスコミや論壇に自分のビジョンを持った人がいないってことじゃろ。自分のビジョンがないから小泉批判をするにしても、足場がないわけよ。小泉の発言が空虚だと批判する者自身のビジョンが空虚なんじゃ。これは野党、民主党もそうで、自分たちの改革と小泉流の改革の「違い」がどこにあるのか、自分でも分かってない。そもそも党綱領が付け焼き刃だからこういうことになる。
獏迦瀬: ぶっちゃけた話、小泉流改革を批判しうる拠点ってのはなんなんでしょう。まさか以前の自民党的守旧路線にもどるわけにもいかないと思いますが…。
伊丹堂: 当たり前じゃが、そういう比較はナカナカいい観点よ。つまりまず最初に自民党的バラまき・あっせん政治あり。それによって国・地方の財政は巨額の借金まみれになり、将来不安を引き起こすとともに、ようするにコネのあるところだけが潤う仕組み、既得権のみが温存されるマフィア的社会となり、経済的活力も低下した。このような図式が周知のものとなったところで、構造改革へのコンセンサスも形成された。
獏迦瀬: そうするとまるでイイことみたいですが(笑)。それに反対するのは身内の既得権を守りたいからでしかないという気さえしてきます。つまりそれがいわゆる自民党の抵抗勢力ってことでしょう。
伊丹堂: ところがどっこい、そこでいう構造改革なるものが、経済至上主義的でなくてはならない、という理由は今までの所、どっからも出てこないわけよ。単に雰囲気としてそれがイコールになっとるだけのことじゃな。
獏迦瀬: また別な道がある…ということですか。
伊丹堂: 別な道どころか、民主主義的介入という王道がある。つまり身内だけの利益を考えた地縁・金縁を主とした守旧路線も、目先の経済的利益を最優先する経済至上主義も、いずれも民主主義、つまり議論による公共性の精神の発現ということを見失っているんじゃ。
獏迦瀬: たしかに…身内だけがうるおうムラ的な経済システムを改めようという話が、いつの間にか失業者なん百万人を容認するという話にすり替わっていくのは奇妙です。
伊丹堂: 合意形成がないんじゃ。自民党総裁選での勝利をあたかも「大統領選」で国民からオールマイティカードを与えられたかのごとくに勘違いしてしまう、というところにすべての錯誤がある。これも資質の問題じゃが。
獏迦瀬: 勘違い男ですか、小泉は…。ゴーンなら株主だけに責任を負えばいいわけですが、首相は国民全体に責任を負うわけっすからね。
伊丹堂: 国民の側にもより大きな責任っちゅうもんがある。つまり民主主義社会を形成する一員としての、前から言ってるように「義務」ってもんじゃな。ようするに経済至上主義にすべてをゆだねるのであれば、「政治」という介入も、それに先だっての「社会はどうあるべきなのか」ということについてめぐらせるべき思考も、すべて放棄したということになるわけじゃからな。
獏迦瀬: いつも話題になるところですが、つまり目先の経済的利益を超えた配慮、ということは結局は「他者への永続的な配慮」へとつながるわけですね。
伊丹堂: つなげるっていうかね。実はそこにこそグローバリズム批判の根拠がある。
獏迦瀬: 他者への永続的な配慮による公共性というものをつきつめていけば、ある意味で一国の経済的利益というものも「超えた」思考をしなくてはなりませんから、むしろそれが本当の意味でのグローバルな思考になるような気もしますが。
伊丹堂: まさにね。しかし現実のグローバリズムはそうではなく、単に目先の経済的利益を優先するのであって、ようするに「資本の論理」による国家の超越に身をゆだねるわけじゃ。これは崩壊の道よ。
獏迦瀬: なるほどね…そういえば中沢本の中で、「類」的な普遍性を問題にしているところで、グローバリズムを「偽の類的普遍」としているところがありましたね。いわゆるグローバリズムは偽グローバリズムということになりますか。
伊丹堂: しかしそれを偽と言ってどっかにホントの普遍性を実現するシステムがあるって発想がダメなのよ。これは前に指摘したことと同じじゃが、もし「真の」グローバリズムというか、類的普遍というものがあるとしても、それはその都度の、それを実現しようとする自覚(倫理性)とその過程での議論と合意の中にしかない。
獏迦瀬: 中沢氏は真の類的普遍を実現する社会を「ある種の社会主義」と言ってますね。
伊丹堂: 民主主義がわかってない(笑)。これは柄谷の書評で指摘したこととまったく同じじゃな。田辺が類的普遍の実現される社会について書いてるところがあっておもしろいんじゃが…。つまり類的国家とは「人類を合わせて一国家となす如き意味に於いてではなく、それぞれの民族国家が、それの成員たる国民の理性的個体性を媒介として、民族的でありながら同時にそれの相即する個人を通じて人類的普遍性を獲得しうる」もの、というところじゃ。
獏迦瀬: それは中沢本でも引用されてたところですね。
伊丹堂: 言い方はややこしいが、それってまさに「一国の経済的利益をこえて永続的な他者への配慮による公共的精神を実現しようとする民主主義の原理」そのものじゃろ(笑)。
獏迦瀬: たしかに…。グローバリズムに反対するのは民族主義というのが通り相場ですが、実はそれはどちらも「一国の経済的利益」はとにもかくにも優先するという意味においては同じムジナってことですね…。
伊丹堂: しかしグローバリズムにおける利益追求は、覇権主義、むかしで言えば「帝国主義」(笑)じゃな。つまり先進国以外の国や地球環境そのものに犠牲をしいるものであるだけにタチが悪い。小泉が靖国問題・教科書問題で民族国家主義に立って平然としているところにもグローバリズムの「本質」ってのが見えるわけよ。
獏迦瀬: 覇権主義と一国の利益っていうと、田中真紀子がミサイル防衛構想を批判した問題で、マスコミが「国益を損ねた」の大合唱だったのが思い出されます。
伊丹堂: いざ田中真紀子が「ミサイル防衛構想を支持する」というと、たとんにタカ派扱いで批判しだしたが(笑)…、政治家もマスコミも、ようするになんの哲学もないんじゃよ。
獏迦瀬: ま、伊丹堂さん的には、国民に民主主義が身についてないからダメなんだ…ということになるんでしょうが。
伊丹堂: ようするに精神の問題じゃな。そのカケラでも小泉流改革の中にあるのか、今回の参院選ではそれをしっかり考えて投票してもらいたいもんじゃね。

●ひるますの単行本『オムレット〜心のカガクを探検する』
 http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/COMIC/digicomi15.html

 発行者:ひるます  (C) HIRUMAS 2001
 ご意見・ご感想等:info@hirumas.com
 登録の変更・解除:http://www.bekkoame.ne.jp/~hirumas/
 配信:Pubzine http://www.pubzine.com/
    melma! http://www.melma.com/
バックナンバー一覧にもどるトップページ(最新情報)にもどる
感想・ご意見をお知らせください。 info@hirumas.com