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「死者をして死者を語らしめよ」号


■日本のあいまいなアタシ(01.12.2)

獏迦瀬: 一ヶ月以上も更新停滞してしまいましたが、なにやらお忙しかったのでしょうか。
珠緒: ひるます氏のこと?、いろいろと身の回りが紛糾してるみたいね(笑)。
獏迦瀬: でもこの前は「世間学会」に出たと聞きましたけど。
珠緒: すごい面白かったみたいね。私も行きたかったわん。この学会については去年の開催のときに紹介したけど(ヘッドライン50号)、世間ってものをいろんな学問や立場から研究していこうって会よね。詳しいレポートをここで書いちゃっていいのかよく分かんないけど?
獏迦瀬: いいんじゃないすか(笑)。どういう内容だったんです?
珠緒: 瀬田川昌裕さんの「ぼかしの論理と世間の倫理」って発表と大野真澄さんの「 結婚年齢差と世間について」って二本ね。瀬田川さんのは、「世間」というもののあり方を「ぼかし」の論理として特徴付けて、それを具体的に分析しているわけよ。
獏迦瀬: ぼかしですか、たしかに世間ってのは、事を白黒ハッキリさせるって感じではないですよね。ムードで決まるっていうか…。
珠緒: 逆に言えばハッキリさせて言うっていうことは、そこでそれをハッキリ言った主体を明確にするってことだし、ウラハラにそれはその「責任を引き受ける」ってことの明言でもあるわけよね。つまりそれが「倫理」ってことになると思うけど。
獏迦瀬: 伊丹堂的定義で言えば、倫理=脱世間的行為、ってことですからね。
珠緒: ただ瀬田川さんは、世間的なぼかしを否定する行動の類型として「啖呵を切る人」と「居直る人」というのをあげていて面白いわ。どちらもモノゴトをハッキリさせているという意味では「ぼかし」ではないけど、それは倫理的行為というような「責任の引き受け」とか「公的なものへの訴えかけ」というファクターをどこか欠いてるのよね。
獏迦瀬: いずれもいかにも「日本的な行動パターン」で、そこをうまく捉えてはいますよね。
珠緒: ところで瀬田川さんは、「ぼかし」の論理ってのは、例えば「タテマエ」を語って「ホンネ」を察してもらうというような表層−深層の構造として捉えてるんだけど、ここで思い出すのが加藤典洋さんのホンネとタテマエの議論よね。
獏迦瀬: 一般にはホンネとタテマエというのは、確固とした本音、つまり真意があって、それを隠してというか、あからさまに隠して?真意とは違うことをタテマエと言うのだという理解だと思うのですが、加藤さんが言ってるのは、そうではなくて、ホンネとタテマエという使いわけをしているときに起きているのは、実は本音という真意の無意味化、というか、語ることの無意味化だというわけですね。つまりそこには根源的にニヒリズムがある、と。
珠緒: 伊丹堂的に言えば実存が空しくされてる(笑)。でも、たしかに「倫理的な決断」において語られるような確固とした真意はそこにはないっていうか、なくなる(無化される)けど、「世間」という中では明らかに「確固として」決定されることはあるわけよね。
獏迦瀬: まあ共同体の論理っつうんですかね。言葉によって明確にされない暗黙の了解みたいなものがあって、それからはみだす者はテッテー的に排除されるということになるわけです。
珠緒: ぼかしの論理ってのは、ようするにそういう暗黙的な共同体論理みたいなものの、具体的っていうか個体的な表現ってことになるのかしら…。それにしても、ぼかしの論理ってことで思い出すのは、こんどの「報復戦争」よね。
獏迦瀬: まあ政治家レベルではぼかしてるつもりはないでしょうけどね。むしろ「居直り」でしょう(笑)。でも進んでる事態はまさに、国際社会協調しての「ぼかし」の論理。誰も証拠がどうとかハッキリしろとかは問題にせず、あいまいなままに戦争を進行しているわけですからね。ってことは「国際社会」の「世間化」っていっていいんじゃないでスカ。
珠緒: そういえば大江健三郎さんが出たNステだけど…。
獏迦瀬: なんか掲示板に書いてましたね(笑)。「日本のあいまいな私」そのままに、戦争に対する態度をあいまいなぼかしでハッキリ語らなかったという…。今年の前半に彼は朝日新聞でチョムスキーさん(反戦メッセージ「9.11」が緊急出版されてます)と往復書簡というのをやって、明確にアメリカのグローバリズムに批判的に語ってたのですが、あれはなんだったのか?って感じですね。
珠緒: それを言ったらひるます氏だって反対メッセージを書く書くといって引き延ばしてるけどね…。あの番組で面白かったのは、アメリカで反戦Tシャツを着て学校へ行って停学になった女子高生が出てたじゃない。ああいう「排除」ってのは、アメリカ社会もまた「世間」だってことなの?
獏迦瀬: ただあれは学校が排除したのではなくて、ある意味では「身の安全を確保するため」だったって面もあるみたいですけどね。つまり近隣住民が彼女を襲撃するとか、そういう可能性があるという…。よくアメリカ映画でホームレスを住民が集団でリンチにかけるってのがありますが、そういう強烈なまでの共同体論理ってのは、僕らがイメージする「世間」とはちょっと違うでしょう。
珠緒: マッチョよね…。というかアメリカによる報復戦争がそのままマッチョな共同体論理の発動ってことか。それを周りの国際社会が「世間」になってあいまいなままにぼかしの論理で「賛同」する、そういう構造になってるってことかな。
獏迦瀬: アイマイって言ったら、テレビの「知ってるつもり」で「オノヨーコ」の特集をしたのですが…。
珠緒: 知ってる(笑)。あれもひどいよね。平和、平和って言って、ようするに「 テロのない社会を」ってとこに強引に結び付けて、結局はまるでオノヨーコが戦争支持しているかのようなとこまで持ってくんだからすごいよ。
獏迦瀬: 日本のマスコミ論調があそこに象徴されてるカンジですね…。

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